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神谷美恵子と前進の日々
神谷美恵子の著書でおもしろい事実を知った。そこに書かれていたのは、安定への欲求と自由への欲求、という人間が抱えるふたつのアンビヴァレントな行動指針に関する一文。噛み砕いて語るなら、人はどうしても生き物として、このふたつの要素を天秤にかけると、ゴロンと怠惰に安定のほうに傾いてしまうよう設計されているのだという。なぜなら「生物の系統発生的な進化の序列のなかで、あとから発生したものほどモロい」という事実があるから。安定への欲求は脳内の旧い皮質で司られ、自由への欲求は大脳皮質でももっとも新しい前頭葉から指示で司られるため、どうしても安定が勝ってしまうのだという。そしてその安定欲が満たされたのちに、はじめて、自由への欲求の枝葉がのびのびと広がっていくのだそうだ。
これはとても納得がいく。精神面であれ、健康面であれ、経済面であれ、人は何かが大きく揺らいでいるときは新しいチャレンジなどとうていできない。バランスを保つので精一杯で少しでもつつかれたらグラついてしまう。「よしここは安定しているぞ」と信じられるベースキャンプがないと、様々な困難が待ち受ける山頂へのルートなど目指せないのだ。ただ、ここにはひとつ落とし穴がある。ここは安心だぞと分かったとたん、その場で毛布にくるまり、ながながと居座ってしまいたくなる思いもたまに出てくるからだ。それはそれで避けねばならない。なぜならいくら食料がふんだんにあるキャンプでも、いつかは物資の底は尽きる。やはり人生は新たな天地をめざして、たえずタフに前進していかなきゃならないようできているのである。
それに、前進するのは苦しくも楽しい。ここ三日ほど「思ったことは全部やる方式」でバシバシ行動する日々をつづけていたら、逆に自分はちょっとネジが足りないんじゃないかと思えるほど、頭がからっぽに清々しくなった。そして予想以上に前進できそうな自分に妙な好奇心が湧いてきた。ところで最近、やや自己啓発的なブログになっていることが我ながら気になる。放っておくと生活がおろそかになり精神に傾いてしまう癖がわたしにはあるので、今後もうすこし、政治や文学や経済などについて学んだ知恵も書きつづっていこうと思う。ちなみにいまは宮台真司さんと福山哲郎さんの共著『民主主義が一度もなかった国・日本』を熟読中。無駄な文がまったくない社会知が詰めこまれた新書。日本で生きる大人として、きちんと信頼にたる基礎知識をかためておきたい。
(December 10, 2009)
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