いまどき大学生雑感

大学生という人種に、ひさびさに接してきた。
主目的はある大学教授を取材するため。そのため四谷にある大学キャンパスを訪れることになったのだが、この取材仕事とは別に、天気もいいことだしキャンパス内をほっつき歩いてみることに。そして観察すること数十分。この大学だけの特徴なのか、いまどき大学生全体にいえることなのか、なかなか興味深い特徴が見えてきた。

まず、男の子と女の子が別々に歩いている子たちが多い。特に男子の二人連れ。男女混合グループというものがあまり見あたらない。また予想外に独りで歩いている子の数も多い。ふーん、なんだか私が大学生だったころとは違うな。昔は、それがいいか悪いかは別にして、もっと大人数で群れているグループとかを目にしたけどなぁ、と不思議な感想をもつ。

観察だけでは好奇心がおさまらなかったので、のちに、キャンパス内の関係者に少し質問をしてみることに。「最近の子たちは、あまり群れないんですか?」すると「いちがいには言えないけれど割とそうかもしれないですね」との曖昧な答。まあ、そりゃそうだ。でもそれじゃ答えとして物足りないので、少しつっこんだ話をすること数十分。「あ、それはおもしろい」と聞いていて思ったのは、現代っ子たちのコミュニケーション法についての分析であった。

まず特徴としてあげられるのは「自分から意見を言う子が少ない」こと。そしてさらにおもしろいのは、意見を求められて意を決してそれを口にすると、その意見が、かんちがいだろうが間違いだろうが「絶対意見として頑なに曲げない子が多い」ということ。つまり、ディスカッションをすることが不得手な子が増加しているのだという。

かくいう私も、あまり人とディスカッションをするのは得意ではない。反対意見を言われると、つい最近までぷんすか頬をふくらまして、ふて腐れたりすることもあった。でもそれじゃ世の中まわっていかない。ということに、最近ようやく気づく。

自分の考えを自分の言葉でつむぎ、しかもそれを相手に届ける。それができないとコミュニケーションは成立しない。なぜなら会話とは、発話者の放つ言葉ではなく、受信者に届く言葉で質が決まるから。とはいえ、これが言うは易しで非常に難しい。私も大学生のときに、下手に頭でっかちな学問をまなぶより、こういうストリートワイズな知恵を積んでいれば、大人になってからもうすこし痛い思いをせずにすんだかもしれないのにと考えてしまう。

つい先日、大女優の草笛光子さんに取材をさせていただいた。そのとき草笛さんが印象深い言葉を語ってくれた。「私は劇作家の菊田一夫先生と、いちばん喧嘩をした女優だと思います。喧嘩をして干されたりもしました。でもそのぶん互いに愛情も深かった」。真っこうから自分の意見を言う喧嘩をして、それでいて後腐れがない。むしろ縁が深まっていく。そんな情の深い昔気質な人間関係に、草笛さんの話を聞いていて、私は密かな憧れを隠せなかった。けれど、いまの大学生たちを見ているとそんな時代が返り咲く可能性は今後も少ないような気がする。

敵味方で対峙するのではなく、考えなしに同調するのでもなく、また醜く自己顕示欲を垂れ流しにするのでもなく、ただまっすぐに気持ちの良い会話がしたい。「会話」をしたい。

(October 15, 2009)



Please leave a comment.

Name

E-mail

Calendar
March 2010
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      


Recent Entries
愉快なロンドン観察記
心の垢すり、再び海外へ
英国Twitter世代演劇
質問を投げるピッチャー
文体と身体のリレーション
仮想リクルーティング活動
平和なカフェと戦争
エンデと望郷の想い
雲南省と文学とマルジェラ
第三次突発性コウモリ症候群
活字を書きながら年越し
京都で呼吸しつつ想う
誕生日と男女共存論
思考と表現とシエンツァ
神谷美恵子と前進の日々
ーーーー
お金と人間の主従関係
NYとアートと七つの大罪
耳たぶと朝靄の孤独
基礎練習と検定試験
帰国、しきる
二年前のロンドン
遊び上手は仕事上手
いまどき大学生雑感
イニシュマン島の静寂 1
アラン諸島と精神美
文明からの隔離
不景気駄文
先史時台へのトリップ
ベルヴィーユと寿町
学習の花を咲かせる
男女の俗説を論証する
博多商人の街は健在
精神的な受動態からの脱出
家族と彼氏とプティタミ
集団失業ヒステリー
Avignon Report ナチェラ・ベラーザ / Le Cri
アヴィニヨン
自分でウェブマガジン
学生宣言
情報センサーを磨く
温泉バージン
難儀な三つ子の魂
フィレマトロジー
NYストーリー 3
NYストーリー 2
NYストーリー 1
豪州でベッタな街
南半球ヘ
ナザニーヌの集中力
UK, France, Netherlands
中学生の一人旅
めんどうくさいの罪
愛と不在とゴドー
男子弱体化と男性不妊症
エローレとエラーレ
デンマーク人の会話法
誇張表現と不器用さ
福岡のオアシス
フランスのメトロノーム生活
コペンハーゲンの人口美
心の手綱
車内アナウンスと自由意志
福岡で女論
信頼度数
官能的なローマの蓮
海外旅行の3Kと体験知
アートの真価実験
落語社会学
幸せアレルギー
昼/夜
2009年のはじめに
年の瀬の家族
無作法と無思慮
Festival d'Automne 2
Festival d'Automne 1
アイソレーションと脳劣化
光のアルペジオ
台風の目
ピュターン!
パリ・アゲイン
シャーデンフロイデ
スタンダールと日本人の幸福
個人主義礼讃のなぜ
アノスミアと感情
個人的な啓示
ちっちゃく大胆な告白者
結婚ミッション
レユニオン島とスルツェイ島
無意味さの意味
シュツットガルトの思索
パリの月と孤独
London-Paris-Stuttgart
結婚と色気
RENTのインタビュー
会話の優位感覚
スウェーデンと日本
スコトーマ
カウチ・サーフィン
座禅
レセプター
7月取材のブログ
男の性欲と行動力
死刑問題
恋する女の理性
ルグリと自己決断
マチュー・ガニオ 最終回
もうひとつのオリンピック
マチュー・ガニオ4
マチュー・ガニオ3
マチュー・ガニオ2
マチュー・ガニオ1
宮本亜門の人生
クイーン・ラニア
Kamikaze sperm
シュツットガルト
THE DIVER
アムステルダムの窓
雨雨雨
イギリスのインフレ
また渡欧
愛撫の効用
タロット占い
思考停止と差別
ダンスとアートとセックス
カウンセリング
デザイナーズ・セックストイ
究極の理解
帰国
パリ再臨
エトワール・ガラ 取材
MULTI-CULTURE
日本ーイタリア
9時半日没
はじめてづくし
あたりまえに感謝
バレエ取材ラッシュ
サビタと家族
記憶
アエラ
手を見る
コリア
幸福論
ありのまま
ベイビー・レイヴ
I'D DO ANYTHING
JOB AND WORK
ホームページ開設