Archive for August, 2009

Avignon Report イスラエル・ガルバン / El final de este estado de cosas, redux

Tuesday, August 25th, 2009
Avignon Report イスラエル・ガルバン / El final de este estado de cosas, redux

夜9時。街にたまる暑熱がひんやり心地よく夜風に冷やされるとき、アヴィニヨンの人々は今日もめいっぱい人生を謳歌した喜びを実証する幸せな疲れに身を預けていく。劇場に集まる人々のなかにも、パフォーマンスを見るよりもむしろ、頭を枕にうずめ瞼を閉じてしまいそうな半醒半睡な顔がちらほら。このはなはだ不利な条件下で、セヴィリヤ出身の天才バイラオール、イスラエル・ガルバンは闘いに見事に完勝してみせた。仏『ル・モンド』紙ものちの劇評で「1300人の観衆のただなかに隕石が落ちた」とこの状況を表現。その言葉が決しておおげさとは思えぬほど、フラメンコ界のウィリアム・フォーサイスと称されるこの異端児は、おネムなおめめの観客の意識を一瞬にして覚醒してしまった。 »

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Paris Report ジョセフ・ナジ / Les Corbeaux

Monday, August 17th, 2009
Paris Report ジョセフ・ナジ / Les Corbeaux

旧ユーゴスラヴィアの小村カニッツァ出身の振付家ジョセフ・ナジの作品を、言葉にするのはとても難しい。彼の作品を見て、カフカ的閉塞感があるとか、ボルヘス的な魔術性に満ちているとか、ベケット的な哀しみに満ちあふれているとか、必死に頭をこねくりまわし文学世界の記号で語ることはできるけれど、なんだか、そうすればするほどナジの世界は遙か彼方に遠ざかっていくように思える。むしろ私は彼の作品に、触覚や嗅覚など、もっと原始的な直感でアプローチしたい。特に今回、パリのメゾン・デ・メタロスで見た『Les Corbeaux(鴉)』はラスコーの壁画やアルタミラの洞窟に通ずるような、人間のプリミティブな創作衝動をたずさえていて、まさに直感的な体験であった。 »

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Avignon Report ジャン・ミシェル・ブリュイヤール LFKs / Le Préau d’un seul

Saturday, August 8th, 2009
Avignon Report ジャン・ミシェル・ブリュイヤール LFKs / Le Préau d’un seul

セバスティアンという聖なる名をもつ青年。健康的な農夫のように陽に焼けた逞しい体躯と、高貴な黄金の髪に縁取られた男らしい美貌を持つ彼は、賑やいだディナーの席で面と向かい私に「ジュ・デテスト・ル・ジャポネ(僕は日本人が嫌いだ)」と言いきった。だが私は彼のそのあまりの邪気のない言葉にむしろ愛嬌を感じてしまった。毎朝飲む一杯のミルクのように、彼にとってはそれがあたりまえの価値観。疑念のない美しき自信家の心には、ユートピアのように真っ白な純粋さが存在するだけで、そこからはしかるべき衝突も軋轢も議論の余地も生まれてこない。アヴィニヨンの片隅。廃屋化寸前の巨大車庫のような外観のル・ミロワトリー(鏡工場)では、ジャン・ミシェル・ブリュイヤール率いるアーティスト集団LFKsによる『Le Préau d'un seul (One Man's Prison yard)』が上演されていた。そしてここにも、純白のユートピアの知られざる被害者たちが居た。 »

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Avignon Report フェデリコ・レオン / Yo en el Futuro

Wednesday, August 5th, 2009
Avignon Report フェデリコ・レオン / Yo en el Futuro

右、左、右。南仏地方では出会いがしらに互いの頬に3度キスをする。まるで甘酸っぱいスグリをついばむ小鳥のように、唇をすぼめてチュチュッと耳元で音を発する。私はこの行為がとても好き。ただの儀礼的な会釈や、熱の入らぬ握手では伝わらない、相手の温度を体で味わうことができるから。気の長いアヴィニヨンの太陽がようやく本格的に復路をたどりはじめる午後五時。タンチュリー通り(直訳するとドライクリーニング通り)12番地にある劇場<サル・ブノワXII>でも、劇場前で、友人知人と待ち合わせをする観客たちがこのキスの挨拶を繰り返していた。今日の上演演目は34歳の若きアルゼンチンの作家/演出家/映像作家フェデリコ・レオンによる新作芝居『Yo en el Futuro (Me in the Future)』。彼はここで、プルーストのごとき「時と記憶」の物語を体感で観客に伝えてみせようとする。 »

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Theatre Report 「プロペラ」と英国シェイクスピア芝居の最前線

Tuesday, August 4th, 2009
Theatre Report 「プロペラ」と英国シェイクスピア芝居の最前線

ウエストエンドと呼ばれるロンドンの劇場街。ここでは今、いつになくシェイクスピアが熱い。そう400年ほど前に死んだあの英国の劇詩人のチケットが飛ぶように売れているのだ。特に現在「ハムレット」を上演中のウィンダム劇場の前には、毎朝、限定30枚の当日券を求める長蛇の列ができる。なぜか。答えは簡単。行列者たちはシェイクスピアでもハムレットでもなく主演男優ジュード・ロウを詣でに来ているのだ。このご時世、セレブの存在は興業収入に欠かせないのか。だが、ここにその方程式を覆す集団がある。安易なセレブ頼りには走らず、品質にフォーカスする。 そんな創作活動で地道にブランド感を高めていく。 財布の紐が固いご時世でも、消費者が足を伸ばすプロペラの正体とは。 »

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