Archive for July, 2009

Travelogue ボンヴィヴァンたちの時間

Friday, July 31st, 2009
Travelogue ボンヴィヴァンたちの時間

陽が昇ると、この街では中世の彼方からモーニングコールが届く。最初は重たいふたつの低音、そしてそれにつづく朗らかな軽音。居候先から目と鼻の先にあるパレ・デ・パップ(法王庁宮殿)の天を貫くような鐘楼から、八時頃、穏やかな鐘の音が、半開きにしたペルスィエンヌ(鎧戸)の向こうから涼風に乗りたゆたってくる。現代の多くのアラーム時計は、分針がカチリと起床時刻に重なると、睡眠時の心拍数にまったくあわぬ、けたたましい油蝉のようなデジタル音を放ちはじめる。非人間的に「起きろ、出かけろ、働け」とせかされているようで気づくと朝から眉をひそめていたりする。だがアヴィニヨンの鐘の音はこれとは異なり実に心穏やか。まるで明け方に瞼を閉じたまま受ける恋人の接吻のように、ささやかに、でも確実に、口角が自然とあがる幸せな目覚めを届けてくれる。 »

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Avignon Report ラシッド・ウラムダン / Des témoins ordinaires

Monday, July 27th, 2009
Avignon Report ラシッド・ウラムダン / Des témoins ordinaires

温度計に容赦のない33℃の表示。だがこの街では「Salle Climatisée (室内冷房中)」とあえて明記されていないかぎり、多くのカフェやレストランは常温営業。これは市内の主な移動手段であるバスでも同じこと。公演場所に赴くとき、人々は埃っぽい市バスのなかでちょっとした我慢大会を経験する。今日上演されるアルジェリア系仏人振付家ラシッド・ウラムダンによる『Des témoins ordinaires (The Ordinary Witnesses) 』の会場も、アヴィニヨンの「intra-muros(街中央をぐるりと取り囲む城壁のなか)」から外へ、市バスで走行すること20分。Villeneuve (ヴィルヌーヴ) という、かつて修道士たちが居住まいを置いた、ローヌ川対岸の町に在る。祈りと暴力、秩序と混乱、光と影。相反する二つの要素を併せのむこの特異な場に、ウラムダンの演目はあまりにもぴたりとあてはまる。 »

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Avignon Report ナチェラ・ベラーザ / Le Cri

Sunday, July 26th, 2009
Avignon Report ナチェラ・ベラーザ / Le Cri

アヴィニヨンの街が気怠さに呑まれる午後三時。さらさらとプラタナスの葉を揺らすローヌ川からの涼風がぱたりとやむ。その風の音にかわり耳に届くのは、日本のそれよりもオクターヴ高いどこか乾いた蝉しぐれ。背後からは白色光線を放つ南仏の巨大な太陽が重石のようにのしかかってくるーー。そんなさなか、蟻の巣のように入りくんだ路地を抜けた先にある小さな教会前には、時刻にそぐわぬ黒山の人だかりができていた。汗みどろな人々は今日ここに、ある年若いムスリム女性によるダンス公演を観にきたのだ。 »

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Interview エドワード・ホール / 演出家

Monday, July 20th, 2009
Interview  エドワード・ホール / 演出家

英国田舎町にある元水車小屋劇場。ここが彼の工房であり遊び場。元RSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)の伝説的演出家ピーター・ホールの息子でありながら、彼エドワード・ホールは、親の七光りという権威をあえてくしゃくしゃと脱ぎ捨て、Tシャツにデニムというインディーズ・ミュージシャンのごとき装いでシェイクスピアと戯れる。日本時間朝4時、眠りにつこうとする思考回路に鞭打ち、東京ーロンドン間のスカイプ電話取材を敢行した。 »

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