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マレーシア現代演劇の現在

November 13, 2012
マレーシア現代演劇の現在

マレーシアで最先端の現代演劇が見たいとガイドブックをめくっても、残念なことに適切な情報に巡り会えるチャンスは少ない。今でもこの国を訪れる観光客の多くはマ・ヨンやガムランといった宮廷舞踊、あるいは各地域に根ざす民族舞踊を鑑賞することを好むからだ。もちろん、異種混合なマレーシアの歴史文化を反映するこれら舞踊を鑑賞することは素晴らしい。ただそうした博物館的な過去の文化ではなく、現在進行形の生きた舞台にこそ興味がある、そして実地に見てみたい、という若者たちもいるだろう。そこで、ここではあまり情報のないマレーシアのコンテンポラリー・シアターを紹介したい。 »

第1回 Berlin Report / ランゲナハット 長い夜 演劇オペラ編

May 1, 2012
第1回 Berlin Report / ランゲナハット 長い夜 演劇オペラ編

第1回ベルリンシアター・レポート。初回は先週末4月28日に開催された「Lange Nacht(ランゲナハット)」—— Long Nightという名の一夜限りの舞台芸術祭を紹介したい。正式名称は「Lange Nacht der Opern und Theater(ランゲナハット・デア・オパーン・ウント・テアーター)」、意訳するならオペラと演劇にまつわる長い夜、といった感じのお祭りで地元情報に詳しい方によると、このランゲナハットはシリーズとして他に、長い夜・美術館編、長い夜・教会編、長い夜・科学編、そして長い夜・大学研究室編、なんてものもあるという。当日は8本の巡回無料バスがベルリン市内の57劇場をぐるぐる廻り、150もの演目が20分刻みで見放題。オスターマイアーの「ハムレット」も見られる本格志向の一夜演劇祭だ。 »

Report / 太陽劇団、ピーター・ブルック、ジンガロ

April 30, 2011
Report / 太陽劇団、ピーター・ブルック、ジンガロ

ピーター・ブルック、太陽劇団のムヌーシュキン、ジンガロのバルバタス。 彼らは揃って親日家なことも幸いし、過去に豊かな演劇体験を極東の島国まで届けてくれた。だが厳密に語るなら、それはクリエイション全体の、ほんの片鱗にも満たないかもしれない。パリとその周辺にある個々の常設劇場に足を運び、そこでの体験にコミットすることではじめて、彼らの総合芸術の真価はわかる。落葉に濡れる初冬のパリ。巨匠たちの三つの常設劇場を探訪した。 »

Paris Report / ジャネット・カーディフ「40 声のモテット」 ニュイ・ブランシュ(3)

December 5, 2009
Paris Report / ジャネット・カーディフ「40 声のモテット」 ニュイ・ブランシュ(3)

トルコ人アーティスト・サルキスのインスタレーションですがすがしい充足感を得たのち、メトロには乗らず、気ままに夜の散策を愉しむことに。ソルボンヌ大学のあるカルチェ・ラタン地域を通り抜け、セーヌ川を渡り、対岸のシャトレ&マレ地域へというルートを辿ることに。カナダ人アーティスト、ジャネット・カーディフによる圧巻の音響インスタレーション『The Forty-Part Motet 40 声のモテット』やマーク・ウォリンガーの『Threshhoold to the Kingdom』を観てまわる。 »

Paris Report / サルキス「Litany」ニュイ・ブランシュ(2)

November 29, 2009
Paris Report / サルキス「Litany」ニュイ・ブランシュ(2)

夜10時。ダウナーな現代音楽が響くメトロ「Arts et Métiers」駅から地下鉄を乗り継ぎ、トルコ人巨匠芸術家サルキスのインスタレーション作品『Litany』が展示される5区のグラン・モスクに到着。そこには視覚・聴覚・嗅覚のすべてから観客を刺激する、光と水とバラの香による聖なる瞑想空間が作りあげられていた。 »

Paris Report / 眠らぬパリの芸術祭「ニュイ・ブランシュ」(1)

November 20, 2009
Paris Report / 眠らぬパリの芸術祭「ニュイ・ブランシュ」(1)

 イベント好きで知られるパリ市長、ベルトラン・ドラノエ氏。その彼が考案し今年で8回目をむかえるアートイベントが「ニュイ・ブランシュ」。直訳するなら白夜祭と題されたこの企画は、その名のとおり、パリ市内で夜っぴいてアート祭りがくりひろげられる。夜7時から朝7時まで、初秋のパリのいたる場所で、世界中の現代アーティストたちによる作品が無料で展示されることになるのだ。筆者はこの祭りに、今年はじめて参戦してきた。 »

Travelogue イニシュマン島の静寂

October 10, 2009
Travelogue イニシュマン島の静寂

極東から極西へ、アイルランドの西の果て、アラン諸島へ旅してきた。芝生が生える音が聞こえるかと思えるほど静かで、虚勢や見栄や尊称といった対外的な利益のためにおこる争いごとから無縁に穏やか、ただ人々が太陽が昇ってから沈むまでの時間を丁寧にすごしているだけの僻地の島。否応なく「Living」という単語の意味をあらためて考えさせられざるをえない、純精神的に充実した旅をすごすことができた。旅の初日に降下したのは、三島のなかでも約160人ともっとも人口の少ないイニシュマン島だ。 »

Avignon Report フェデリコ・レオン / Yo en el Futuro

August 5, 2009
Avignon Report フェデリコ・レオン / Yo en el Futuro

右、左、右。南仏地方では出会いがしらに互いの頬に3度キスをする。まるで甘酸っぱいスグリをついばむ小鳥のように、唇をすぼめてチュチュッと耳元で音を発する。私はこの行為がとても好き。ただの儀礼的な会釈や、熱の入らぬ握手では伝わらない、相手の温度を体で味わうことができるから。気の長いアヴィニヨンの太陽がようやく本格的に復路をたどりはじめる午後五時。タンチュリー通り(直訳するとドライクリーニング通り)12番地にある劇場<サル・ブノワXII>でも、劇場前で、友人知人と待ち合わせをする観客たちがこのキスの挨拶を繰り返していた。今日の上演演目は34歳の若きアルゼンチンの作家/演出家/映像作家フェデリコ・レオンによる新作芝居『Yo en el Futuro (Me in the Future)』。彼はここで、プルーストのごとき「時と記憶」の物語を体感で観客に伝えてみせようとする。 »

Travelogue ボンヴィヴァンたちの時間

July 31, 2009
Travelogue ボンヴィヴァンたちの時間

陽が昇ると、この街では中世の彼方からモーニングコールが届く。最初は重たいふたつの低音、そしてそれにつづく朗らかな軽音。居候先から目と鼻の先にあるパレ・デ・パップ(法王庁宮殿)の天を貫くような鐘楼から、八時頃、穏やかな鐘の音が、半開きにしたペルスィエンヌ(鎧戸)の向こうから涼風に乗りたゆたってくる。現代の多くのアラーム時計は、分針がカチリと起床時刻に重なると、睡眠時の心拍数にまったくあわぬ、けたたましい油蝉のようなデジタル音を放ちはじめる。非人間的に「起きろ、出かけろ、働け」とせかされているようで気づくと朝から眉をひそめていたりする。だがアヴィニヨンの鐘の音はこれとは異なり実に心穏やか。まるで明け方に瞼を閉じたまま受ける恋人の接吻のように、ささやかに、でも確実に、口角が自然とあがる幸せな目覚めを届けてくれる。 »

Travelogue ピュターン!

June 18, 2009
Travelogue ピュターン!

一週間もつづく夜雨で街路樹さえ風邪をこじらせそうなパリの晩秋。天候の悪化と平衡してみるみる機嫌も悪化していく出不精なパリジャンたちを尻目に、東京通勤速度の早足で、パリ四区シャトレ広場のテアトル・ド・ラ・ヴィルへ向かう。夜八時。 ピナ・バウシュ、ヤン・ファーブル、ウィリアム・フォーサイスといった名だたる振付家の世界の交叉点でもある百五十年近い歴史を持つ名門劇場に足を踏み入れる。 »