Theatre
Report / 太陽劇団、ピーター・ブルック、ジンガロ
ピーター・ブルック、太陽劇団のムヌーシュキン、ジンガロのバルバタス。 彼らは揃って親日家なことも幸いし、過去に豊かな演劇体験を極東の島国まで届けてくれた。だが厳密に語るなら、それはクリエイション全体の、ほんの片鱗にも満たないかもしれない。パリとその周辺にある個々の常設劇場に足を運び、そこでの体験にコミットすることではじめて、彼らの総合芸術の真価はわかる。落葉に濡れる初冬のパリ。巨匠たちの三つの常設劇場を探訪した。 »
Report / フェデリコ・レオン「未来のわたし」
人間の過去は、必ず美化される。ある一瞬の笑顔が時のなかで倍加され、他の無表情で退屈な時間を呑みこんでしまう。若きアルゼンチン人演出家フェデリコ・レオンは、この甘やかに倍加された記憶時間に観客を誘ってみせる。そして特別な一瞬が、一時間にも、一生にも感じられる時空を紡いでいく。京都国際舞台芸術際で上演されたアルゼンチンの若き演出家の最新作への劇評。 »
Interview ジゼル・ヴィエンヌ / 演出家・振付家・人形作家
「これはダンス?」と思うとセリフが語られ「演劇?」と思うとインスタレーションのごとく沈黙する。さらに舞台上で引用される、バタイユやニーチェによる強烈哲学に思考を馳せていると、いきなり劇場全体が真っ白な濃霧に襲われる。まさに思考と体感の極限体験。なるほどヤン・ファーブルに見初められたアーティストだと聞いて納得がいった。現代芸術界の巨匠が、ダンスとも演劇ともアートともつかぬ先鋭作品を創作するのと同様、若きジゼル・ヴィエンヌもまた非常にジャンル越境的な舞台を創造するからだ。7月のアヴィニヨン演劇祭にて新作『This is how you will disappear(こうしておまえは消え去る)』を発表した彼女に、現地でインタビューを行った。 »
Interview 蜷川幸雄 / 演出家
日本を代表する演出家である蜷川幸雄。東京にいると彼の芝居が毎晩上演されているような錯覚を覚える。それほど蜷川は、キャリアが四十年を超す今も、驚異的な多作体制を崩さない。また量が過剰なら質も過激。この演出家はつねに、人の足場を揺るがすような、熾烈な劇世界の台風に観客を巻きこんできた。その刺激によって日本の演劇界が、どれほど大きく変容してきたことか。まさに彼の存在なくしては、今の日本の演劇界はありえない。好奇心旺盛で勉強熱心、照れ性で誠実で、誰よりも自分に厳しい。年中無休で火を吹きつづける創造のシリンダーを原動力に、今日も、創造の現場に立ち向かう。その過激な半生の、足跡を追う。 »
Interview 野田秀樹 / 劇作家・演出家
野田秀樹のことを茶化して「大人げない」という人たちがいる。けどおそらくこの非難は、的外れだ。なぜなら野田は大人「げ」ないのでなく、大人「で」ないのだ。彼のなかでは間違いなくいまだに、1日は40時間あり、体重は20キロであり、3歳児の学習臨界期を越えていない。そして彼はその自由自在な時間と重力と脳内速度を駆使して、天衣無縫の妄想世界を舞台上に壮大に織りなす。今も昔も演劇界の最前線をひとり切り拓いてきた真正の麒麟児は、観客を、大人でない少年時間へといざなう。くらくらと目眩のするような、言葉の金斗雲に乗せて。 »
Interview 岩松了 / 劇作家・演出家
劇作家・岩松了の芝居では、個々の登場人物が幾億光年へだてた惑星のようにぽつねんと孤独に浮いている。「人と人とは言葉によって完璧に理解しあえる」なんて、幻想にはきちんと折り合いをつけて。それでも舞台上の人々は、性懲りもなく他者への2ミリの理解を求め。臆病に、必死に、言葉を交わす。だから彼の芝居では「えっ」なんていう小さなセリフの奥底に、大河のごとき感情の濁流が流れていたりする。いわば「えっ」と言葉を呑みこんだその人間の体にこそ、岩松戯曲の真髄はあるのだ。 現在までつづく、某演劇雑誌でのロングインタビュー第1弾。 »
Interview ロメオ・カステルッチ / 演出家
現代演劇界における異端の創造者。イタリア人演出家ロメオ・カステルッチには、アーティストというより「創造者」という称号が似つかわしい。それほど彼の生み出す作品群は、たった独りの人間によるものだとは思えぬほど圧倒的な知的精度とヴィジュアルイメージで観客に迫りくる。なかでも今回日本で上演されるダンテの『神曲』三部作は、鬼気迫るカステルッチの才能をみせつける大作群。この舞台に関して演出家本人に、今年4月ロンドンで取材を行った。強靱なロジックに裏打ちされた発言が、この創造者の尋常ならざる特異さをあらわしている。 »
Interview with Akram Khan / Choreographer
Only in his mid-thirties, this young British- Bangladeshi choreographer has already tied up with the top-list greats in the bustling art world, gaining him a dashing stellar career and a center stage spotlight. Some of the names among his eminent co-workers are, the controversial British sculptor Anish Kapoor, the French ballet diva Sylvie Guillem, and... »
Avignon Report ジャン・ミシェル・ブリュイヤール LFKs / Le Préau d’un seul
セバスティアンという聖なる名をもつ青年。健康的な農夫のように陽に焼けた逞しい体躯と、高貴な黄金の髪に縁取られた男らしい美貌を持つ彼は、賑やいだディナーの席で面と向かい私に「ジュ・デテスト・ル・ジャポネ(僕は日本人が嫌いだ)」と言いきった。だが私は彼のそのあまりの邪気のない言葉にむしろ愛嬌を感じてしまった。毎朝飲む一杯のミルクのように、彼にとってはそれがあたりまえの価値観。疑念のない美しき自信家の心には、ユートピアのように真っ白な純粋さが存在するだけで、そこからはしかるべき衝突も軋轢も議論の余地も生まれてこない。アヴィニヨンの片隅。廃屋化寸前の巨大車庫のような外観のル・ミロワトリー(鏡工場)では、ジャン・ミシェル・ブリュイヤール率いるアーティスト集団LFKsによる『Le Préau d'un seul (One Man's Prison yard)』が上演されていた。そしてここにも、純白のユートピアの知られざる被害者たちが居た。 »
Avignon Report フェデリコ・レオン / Yo en el Futuro
右、左、右。南仏地方では出会いがしらに互いの頬に3度キスをする。まるで甘酸っぱいスグリをついばむ小鳥のように、唇をすぼめてチュチュッと耳元で音を発する。私はこの行為がとても好き。ただの儀礼的な会釈や、熱の入らぬ握手では伝わらない、相手の温度を体で味わうことができるから。気の長いアヴィニヨンの太陽がようやく本格的に復路をたどりはじめる午後五時。タンチュリー通り(直訳するとドライクリーニング通り)12番地にある劇場<サル・ブノワXII>でも、劇場前で、友人知人と待ち合わせをする観客たちがこのキスの挨拶を繰り返していた。今日の上演演目は34歳の若きアルゼンチンの作家/演出家/映像作家フェデリコ・レオンによる新作芝居『Yo en el Futuro (Me in the Future)』。彼はここで、プルーストのごとき「時と記憶」の物語を体感で観客に伝えてみせようとする。 »