Dance
Interview ジル・ロマン / 芸術監督・ダンサー
「他の誰でもなく彼だけが……私のバレエを、継続し、保存し、所有するただひとりの人間だ」。2年前に逝去したバレエ界の巨匠モーリス・ベジャールから、まるで父子のような深くゆるぎない信頼をえて、ベジャール・バレエ・ローザンヌの芸術監督職に就任したジル・ロマン。この新たな統率者のもとカンパニーは、巨星を失ったのちも決して灰まみれの死火山になることなく、ベジャール自身も好んだ進取の気性にとんだ活発な創作に挑みつづけている。 »
Interview ピーター・マーティンズ / NYCB芸術監督
ニューヨーク・シティ・バレエの芸術監督として、単独でカンパニーを率いるようになり今年で20年。西62丁目のオフィスビル、燦々と夕陽がさしこむ摩天楼最上階のディレクターズ・ルームで執務を取りしきるピーター・マーティンスは、63歳とは思えぬ若々しい好奇心で筆者を迎え入れてくれた。その小さな録音機は日本の最新機器か、東京の観客は今回の我々のプログラムをどう思っているのか。どちらが取材をしに来たのか分からぬほどの質問攻め。だがこの旺盛な好奇心があってこそ、ゆうに50を越えるシーズン演目を、つねに時代とズレのない視点で選び抜くことができるのだろう。NYCB2009 日本ツアー公式プログラムのために執筆したインタビューを転載。 »
Interview with Akram Khan / Choreographer
Only in his mid-thirties, this young British- Bangladeshi choreographer has already tied up with the top-list greats in the bustling art world, gaining him a dashing stellar career and a center stage spotlight. Some of the names among his eminent co-workers are, the controversial British sculptor Anish Kapoor, the French ballet diva Sylvie Guillem, and... »
Avignon Report イスラエル・ガルバン / El final de este estado de cosas, redux
夜9時。街にたまる暑熱がひんやり心地よく夜風に冷やされるとき、アヴィニヨンの人々は今日もめいっぱい人生を謳歌した喜びを実証する幸せな疲れに身を預けていく。劇場に集まる人々のなかにも、パフォーマンスを見るよりもむしろ、頭を枕にうずめ瞼を閉じてしまいそうな半醒半睡な顔がちらほら。このはなはだ不利な条件下で、セヴィリヤ出身の天才バイラオール、イスラエル・ガルバンは闘いに見事に完勝してみせた。仏『ル・モンド』紙ものちの劇評で「1300人の観衆のただなかに隕石が落ちた」とこの状況を表現。その言葉が決しておおげさとは思えぬほど、フラメンコ界のウィリアム・フォーサイスと称されるこの異端児は、おネムなおめめの観客の意識を一瞬にして覚醒してしまった。 »
Paris Report ジョセフ・ナジ / Les Corbeaux
旧ユーゴスラヴィアの小村カニッツァ出身の振付家ジョセフ・ナジの作品を、言葉にするのはとても難しい。彼の作品を見て、カフカ的閉塞感があるとか、ボルヘス的な魔術性に満ちているとか、ベケット的な哀しみに満ちあふれているとか、必死に頭をこねくりまわし文学世界の記号で語ることはできるけれど、なんだか、そうすればするほどナジの世界は遙か彼方に遠ざかっていくように思える。むしろ私は彼の作品に、触覚や嗅覚など、もっと原始的な直感でアプローチしたい。特に今回、パリのメゾン・デ・メタロスで見た『Les Corbeaux(鴉)』はラスコーの壁画やアルタミラの洞窟に通ずるような、人間のプリミティブな創作衝動をたずさえていて、まさに直感的な体験であった。 »
Avignon Report ラシッド・ウラムダン / Des témoins ordinaires
温度計に容赦のない33℃の表示。だがこの街では「Salle Climatisée (室内冷房中)」とあえて明記されていないかぎり、多くのカフェやレストランは常温営業。これは市内の主な移動手段であるバスでも同じこと。公演場所に赴くとき、人々は埃っぽい市バスのなかでちょっとした我慢大会を経験する。今日上演されるアルジェリア系仏人振付家ラシッド・ウラムダンによる『Des témoins ordinaires (The Ordinary Witnesses) 』の会場も、アヴィニヨンの「intra-muros(街中央をぐるりと取り囲む城壁のなか)」から外へ、市バスで走行すること20分。Villeneuve (ヴィルヌーヴ) という、かつて修道士たちが居住まいを置いた、ローヌ川対岸の町に在る。祈りと暴力、秩序と混乱、光と影。相反する二つの要素を併せのむこの特異な場に、ウラムダンの演目はあまりにもぴたりとあてはまる。 »
Avignon Report ナチェラ・ベラーザ / Le Cri
アヴィニヨンの街が気怠さに呑まれる午後三時。さらさらとプラタナスの葉を揺らすローヌ川からの涼風がぱたりとやむ。その風の音にかわり耳に届くのは、日本のそれよりもオクターヴ高いどこか乾いた蝉しぐれ。背後からは白色光線を放つ南仏の巨大な太陽が重石のようにのしかかってくるーー。そんなさなか、蟻の巣のように入りくんだ路地を抜けた先にある小さな教会前には、時刻にそぐわぬ黒山の人だかりができていた。汗みどろな人々は今日ここに、ある年若いムスリム女性によるダンス公演を観にきたのだ。 »
Travelogue ピュターン!
一週間もつづく夜雨で街路樹さえ風邪をこじらせそうなパリの晩秋。天候の悪化と平衡してみるみる機嫌も悪化していく出不精なパリジャンたちを尻目に、東京通勤速度の早足で、パリ四区シャトレ広場のテアトル・ド・ラ・ヴィルへ向かう。夜八時。 ピナ・バウシュ、ヤン・ファーブル、ウィリアム・フォーサイスといった名だたる振付家の世界の交叉点でもある百五十年近い歴史を持つ名門劇場に足を踏み入れる。 »
Interview ジュリエット・ビノシュ / 女優
知的好奇心でふくらむ胡桃ような瞳をむけて、てらいなく眼の前に座る女性が44歳だとはとても思えない。そこに居るのは『ポンヌフの恋人』のミシェルや、『存在の耐えられない軽さ』のテレザや、『イングリッシュ・ペイシェント』のハナと同じく、いつでも迷いなく愛することに身を投げ、矢のようにまっすぐに衝動に従って生きる、生命力に満ちた若々しい女性。だから女優ジュリエット・ビノシュが、いきなりパリ市立劇場での公演『In−i』で”ダンサー”として舞台に立つと聞いたときも、さほどの驚きはなかった。彼女はただ自分の心に従い、新たな好奇心に生きただけ。 »