マレーシア現代演劇の現在

November 13, 2012

マレーシアで最先端の現代演劇が見たいとガイドブックをめくっても、残念なことに適切な情報に巡り会えるチャンスは少ない。今でもこの国を訪れる観光客の多くはマ・ヨン[Mak young]やガムラン[Gamelan]といった宮廷舞踊、あるいは各地域に根ざす民族舞踊を鑑賞することを好むからだ。もちろん、異種混合なマレーシアの歴史文化を反映するこれら舞踊を鑑賞することは素晴らしい。ただそうした博物館的な過去の文化ではなく、現在進行形の生きた舞台にこそ興味がある、そして実地に見てみたい、という若者たちもいるだろう。そこで、ここではあまり情報のないマレーシアのコンテンポラリー・シアターを紹介したい。

マレーシアでは1994年に公的支援がなされる唯一の舞台芸術高等教育機関Arts Culture and National Heritage (旧Akademi Seni Kebangsaan / 国立芸術アカデミー)が設立されて以後、その卒業生たちが新たな現代演劇の潮流を生み出したと言われている。マレーシア演劇界の重鎮と謳われる、国立劇術アカデミー初代学部長Krishen Jit (2005年死去)に師事するかたちで、1990年代から多くの才能が輩出されてきた。その代表的な存在が、演出家、映画監督、脚本家、役者として活躍するNam Ron率いる劇団「Alternative Stage」。

またマレーシア初の私営劇場として1989年に創設されたThe Actors Studioも、この国でのインディペンデント・シアターの基盤を作りあげた集団として知っておきたい。Joe Hashamとその夫人Faridah Maricanにより志高く創設されたこの集団は「意義ある演劇の創造、舞台芸術の若い観客の育成、そして舞台芸術における教育」の三本柱を指針にたった153席の小屋を拠点に活動を開始。以後、地元の演劇界で着実に地位を築きあげ、現在では市内に三つの劇場を抱えるまでに成長した。

The_Actors_Studio@Lot_10
(クアラルンプール市内にある The Actors Studio の内観。舞台と客席の一体感がほどよく味わえ、とても居心地のよい小劇場空間。Pic: Wikmedia.)

演出家Jo Kukathasによって1989年に設立されたThe Instant Cafe Theatre Companyもその政治風刺的な作風により、ときに政府に煙たがられながらも、若くリベラルな思考を持つ観客たちに広く支持されている。特に脚本家・役者のJit Muradが演じた強烈な美容師キャラは、一時、マレーシアの国民的アイコンとして親しまれるほど普及した。

その他、政治劇の書き手として高い評価を得るHuzir Sulaimanやフィジカルシアターのトップランナーとして知られるLoh Kok Manなども刺激的な存在だ。ときには一般的な観光ルートを離れ、これら現代作家たちの舞台から今のマレーシアの息吹を感じてはいかがだろうか。

<記事初出:2012年10月1日 TravelWireAsia.com >
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