第2回 Berlin Report / ヨーン・ガブリエル・ボルクマン

May 18, 2012

tt12_john-gabriel-borkman01_media_gallery_res今年のTheatertreffen演劇祭、最大の話題作であるノルウェーの演出家+美術作家コンビ、Vegard VingeとIda Müllerによる日替わり即興演出の「ヨーン・ガブリエル・ボルクマン」12時間上演を観劇してきた。これは彼らのイプセン・サーガ第4弾目となる作品で「人形の家」「野鴨」「幽霊」につづくもの。基本的にこれらの作品はすべて同路線の演出と美術を踏襲しており、美術のみならず、衣装、メイク、効果音、など舞台上の全要素を徹底して「Manga化」し、そこに性描写や暴力表現といった18禁のパフォーマンスを、ダンス、オペラ、人形劇、映像、ビデオゲーム、といった手法を用いてのせていく。

ベルリンのVolksbühne Prater劇場で夕方4時に始まり明け方4時に終わる舞台を、私は疲れて深夜12時頃に途中退場してきてしまったが、体力さえもてばぜんぜん朝まで見ていても飽きない内容だった。簡単に描写するならこれは、圧倒的精度で創作された「アーティスティックなお化け屋敷」である。内に内にと深淵な熟考を強いる演劇とはまったく逆に、あえて彼らは、アンディ・ウォーホールではないが、「表層」のみに徹底してこだわる。そして観客をそのキッチュにデザインされた世界感でラッピングしてしまうことで、ガジェットライドのような体験型演劇のなかへと誘っていく。観客は、何時間もそのポップキッチュワールドに包まれていると、現実の常識感を失っていく。この「常識のタガをはずすこと」が彼らの狙いのひとつなように思う。

とにかく舞台上は無法地帯であり、次の瞬間、なにが起こるかわからない。あるいは舞台の第4の壁を乗り越えて、どんな場外乱闘が客席ではじまるかもわからない。水をかけられるぐらいならまだしも、噛みつかれたり、ペンキを塗られたり、ビールを盗み飲まれたり、性器を押しつけられたり……。あるいは役者と観客のあいだで、本気の枕投げのように、ダンボールでできたブロックの投げ合いが始まったりもする。ただし彼らは単純にムチャを売りにしているわけではなく、そんなアナーキー状態でもキッチュ世界にホツレが出て客が現実に戻ってしまわないよう、芸術的精度の手は決して抜かない。ダンボールのブロックが客に当たればきちんと「ガツンッ」という効果音が入るし、役者が一歩一歩あるくたびに「ペタッペタッ」という擬音が挿入される。これは、、、技術屋さんたちの精度がすばらしいと途中で本気で感服し、まわりを見渡してみると、目撃できたかぎりでも劇場内に常時8人の技術者が、後方、通路、前方、に待機していた。

イブセンの「ヨーン・ガブリエル・ボルクマン」は、ほぼ内容的に関係がない。戯曲から数行だけ抜粋し、それを機械を通しタ変形アニメ声でなんどもなんども繰り返し発話するだけだ。セリフらしいセリフはほとんどなく、ある日の演出ではただ何十分も6千いくつまで役者が数字を読みあげていったらしい。私が見た回も数字を読みあげていたが、100の単位で終わった。

いずれにしろ百聞は一件にしかず。彼らの作品は、言葉にするより写真でお見せしたほうが良いと思うので、場内で撮影した写真を掲載したいと思う。iPhoneで撮ったのでブレブレですが、ご堪能あれ。

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劇場の外壁を、黒ペンキで塗りはじめた役者。
外壁だけでなく、場内ロビーやトイレや通路もあたりかまわず塗りまくっていました。

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上階には女性の裸体が横たわり、地上階では狼男と老婦の乱闘が展開されていました。
見ておわかりの通り舞台美術の作りこみが凄いです。

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ボケていてよくわからないかもしれませんが、客席背後には、衣装をまとった
技術者や裸の演出家が待機してつねに指示だししていました。

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役者と観客間で、ダンボールの投げ合い合戦。30分ぐらい本気のドッジダンボールが続きました。

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客席側面も、忍者屋敷のからくり扉のようになっていて、くるりと廻ると役者が登場します。

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一応、銀行頭取のヨーン・ガブリエル・ボルクマン氏。
幕に映像が投影されています。
次の瞬間には、演出家が彼の頭に放尿していました。

もっと彼らの作品を知りたい方は、こちらをどうぞ。
「人形の家」の映像です。>>> http://www.youtube.com/watch?v=YVpDjOh-SUQ

Berliner Festspiele – Theatertreffen: John Gabriel Borkman. 4th part of the Ibsen saga. Season 2 / performances #20–25 http://www.berlinerfestspiele.de/en/

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