Report / ジョエル・ポムラ「Ma chambre froide」

April 4, 2011

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2011年3月15日 Atelier Berthier Théâtre de l’Odéon
【作・演出】ジョエル・ポムラ

ジョエル・ポムラ。「フランスでいま面白い芝居家は誰だ」という問いに対し、十中八九帰ってくるのがこの名前。エリート主義な仏演劇界では珍しく、一役者からの叩きあげで作家兼演出家として独り立ちした逸材だ。1990年に自身の劇団<カンパニー・ルイ ブルイヤール>を創設。以後、劇団の中核メンバー7人とともに“一毛作”で定期的に新作を発表しつづけている。80年代以後、フランス演劇界を席巻した「演出家の時代」はいまや昔。ポムラの先行世代にあたるオリヴィエ・ピィ(オデオン座芸術監督)や、若手世代のパスカル・ランベール(ジュヌビリエ国立演劇センター芸術監督)やユベール・コラス(コリン座提携作家)などの才能たちはこの国で新たな「劇団の時代」を築きはじめている。

3月にオデオン座附属の小劇場アトリエ・ベルティエで上演された、ポムラの最新作『Ma chambre froide(わたしの貯凍室)』では、彼の美的特質とされる、陰鬱ながらも生の彩やかさにみちたポエジーと、多義的な読解を可能にするナレーションを軸に、現代社会へ訴求力のあるリアル叙情詩が提示された。

04年からジュヌリヴィリエ国立演劇センターで連続発表された三部作(『Au Monde』『D’une seule main』『Les Marchands』)では、世界同時不況にみまわれる現代において否応なく生じる搾取や強制といった労働倫理の腐敗と、それにより喉元をじわりじわりと締めつけられる家族や社会の姿を強靱な筆致で描きぬいてみせた。「不遇時代に生きる普通の人」の姿を、濃縮還元されたリアルとして芝居に仕立てるのがポムラの手腕なのだ。

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This entry was posted on April 4, 2011 at 05:32.

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