Report / カロリン・カールソン「Blue Lady」

March 28, 2011

© Anna Solé

© Anna Solé


2011年3月24日 Théâtre Cachan
【振付】 カロリン・カールソン
【ダンサー】 テロ・サーリネン
【オリジナル楽曲】 ルネ・オーブリー
【オリジナル美術】 フレデリック・ロベール
【照明(再演)】ピーター・ヴォス
【照明(初演)】 ジョン・デイヴィス、
       クロード・ナヴィル
【衣装 (再演)】 クリステル・ジンギーロ





名は耳にすれども観る機会に恵まれぬ振付家。東京に暮らしていると、そうしたアーティストの作品に触れたい欲望だけが降り積もっていく。アメリカ合衆国カリフォルニア州に生まれ、過去40年、ヨーロッパの第一線で活躍してきたカロリン・カールソンもそんな存在のひとり。幸運にも今月、フランスで開催中の<第16回ヴァル・ド・マルヌ県ダンスビエンナーレ>にて、彼女の代表作のひとつ『ブルー・レディ Revisited(再訪)版』を目にすることができた。

同時期にフランス各地を巡演中の『ダブル・ヴィジョン』(06)の評判がかんばしくなく、彼女の創作的な老いがささやかれていることは以前から聞きおよんでいた。そのため、いくら彼女の初期作とはいえ、時に風化した旧作を見せられるのではないかと、劇場への足取りが重かったことは否めない。しかし結論からいえば、その想いは杞憂に終わった。83年から12年にわたりカールソン自身が踊りつづけ、フランスで「ヌーヴェル・ダンスの代表作のひとつ」と謳われた本作の作品的強度は、確かにパッケージこそ一世代前のものとして古びてはいるものの、本質的な身体言語は時代に流されぬ高級ヴィンテージのような品位を凛々しく保っていた。新しさを下手に気どり十年で古びるまがいもののファッションのようなコンテンポラリー・ダンスには、到底及びもつかぬ振付的純度だ。

上演時間75分。たったひとりのダンサーがルネ・オーブリーの神秘的な音楽にあわせ、舞台上で5人のレディを踊りわける。あるいはそれは、人生の春夏秋冬の踊りわけだともいえる。現在のダンス業界の一般常識では、フルレングスの作品というと、美術やセットや人海戦術で豪華さを出すのがあたりまえとなっている。だがかつて70年代にパリ・オペラ座バレエ団から「エトワール兼振付家」の名誉職を得たカールソンは、身ひとつで舞台に立ち、一時間以上の舞台を堂々持たせることができた。この偉業の後釜をいったい誰が引き継ぐのか。当時いろいろな情報が噂され、かのシルヴィ・ギエムも依頼を断るという裏事情があったすえに、08年からこの大任を受け継ぐことになったのがフィンランドの男性振付家テロ・サーリネン。なぜ男性ダンサーを後継者に選んだのか。その理由を訊ねられたカールソンは、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)のインタビューで簡潔にこう答えている。「だって女性ダンサーを選んだら、誰もが私と比較するでしょう?」

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This entry was posted on March 28, 2011 at 02:52.

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