Dance Review 山海塾 KARA・MI

June 10, 2010

g_tv10amagatsukara京の石庭を思わす、おだやかに砂が敷かれたパリ市立劇場の舞台面。 その薄皮の砂面のうえに、ころんと、白塗りの舞踏手が魂の抜けた人形のごとく仰向けに倒れる。そしてその空洞化した体を、ほかの数人が、聖なる御柱でも起こすかのように丁寧に垂直に立てていく――。

山海塾による二年ぶりの新作『KARA・MI』ではまず、このような印象深い無機的動作で、私たちの生身の「体」に対して疑義を投げかける。果たして西洋では単なる容れ物として捉えられるこの体の内では、魂、無意識、あるいは約六十兆という細胞がどのように共生しているのか。振付・構成を担う天児牛大は、デカルトの心身二元論から遠くはなれ、東洋的な全体感で体と対話し内へと潜っていく。また天児は本作のタイトルについてこう解き明かす。

「<から>は、空の体を指します。<み>は「身」であり、これは命を宿す女性の体を横から見た象形文字です。つまり『から・み』で、空の体=死と、命の宿る体=生の双方を表しているのです」

タイトルの中央に配置されたのが「/」ではなく「・」であることからも理解されるように、天児は<から>と<み>を、つまりは死と生を、クリアに分化せずに提示する。また頭と体、無機物と有機物、内と外、のあいだの界面もーー宙でゆらゆらと揺れる七枚の”半透明な”プレート板が示唆するようにーーあちらとこちらがきっちりと分断されずそこに在る。
山海塾は本作で、私たちの体のうちへの微視的探求を試み、無数の命が共生するひとつのミクロコスモスを美しく創りあげてみせた。

May 3, 2010 @ Théâtre de la Ville, Paris

初出 : DANZA 2010 8-9月号

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