Interview ピーター・マーティンズ / NYCB芸術監督

December 20, 2009

——ただやはり5年前の<バランシン誕生百年祭>の頃に比べると、1シーズンあたりに上演できるレパートリー数は減少してきているように思われます。

そうですね。百年祭のときには、一年に84演目ものレパートリーを上演しましたから。あのときは特別でした。またこのところ不況の影響で、演目数が少なくなっていることは事実です。それでも一年にこれほど多くのレパートリーを上演するカンパニーは、世界中どこにもありませんよ。他の多くのバレエカンパニーは、それがお隣のアメリカン・バレエ・シアターであれ西海岸のサンフランシスコ・バレエであれ、我々のそれとは異なるレパートリー制を採っている。つまり彼らは一週間『眠れる森の美女』を上演して、つぎの一週間は『ドン・キホーテ』を上演するという、ブロック・レパートリー制を採用していますからね。我々のカンパニーのように、毎晩異なる演目を上演しているわけではない。そして言うまでもなく、こうして毎夜毎夜、異なる演目を披露しつづけることには大変な努力が必要です。ただ嬉しいことにここで働く人々は、誰しも豊穣なレパートリーを保つなかにこそNYCBの本質があることを理解している。だから通常のバレエカンパニーとは異なる労働体系にも不平を言いません。どう異なるかって? 簡単ですよ。より多く働くんです(笑)。1日に6時間ものリハーサルに明け暮れるのは、少なくともアメリカではうちだけです。

——あなたもこの芸術監督室で、朝から晩まで働きづめのようですね。最上階にあって見晴らしがいいので、とても居心地のいいオフィスではありますが。

忙しいことは事実です。週6日、毎日12時間はここで働いています。でも昨日、新しくそのフラットテレビを導入したんです、いいでしょう(笑)。ちなみに今あなたが腰掛けているその古いソファには、よくリンカーン・カースティンが座っていました。それで毎晩、ヴォッカを飲みながら私に話しかけてきたものです。そうだ、いま思い出しました。あれはいつだったかな。彼がまるで白髪の賢者のような言葉をぽつりとその席でつぶやいたんです。「なあ、ピーター……」彼はいつになく真剣でした。「我々は失敗する権利を放棄することだけはやめよう」。私はその言葉に息を呑みました。なんて賢い老人なんだと軽いショックを受けました。ただ今から思えば、当時の私はその言葉の意味を半分も理解していなかった。それから数十年経ったいま、ようやくその言葉の意味が飲み込めたように思います。もしバレエ団の芸術監督が失敗する権利を放棄してしまったら、おのずとそのカンパニーは挑戦を避けるようになり、知らずのうちに商業主義の思考回路に陥ってしまうのです。

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This entry was posted on December 20, 2009 at 23:03.

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