Interview ロメオ・カステルッチ / 演出家
——あなたが創作現場における対話の難しさをどのように捉えているかは理解できました。では演劇における、演者と観客の、舞台と客席との「コミュニケーション」に関してはどのような意見をお持ちでしょうか。
RC:私の考えでは演劇とは、コミュニケーションの領域外にあるものです。演劇はなにもコミュニケートしません。なぜなら俗にいうコミュニケーション、つまり言語によるコミュニケーションが非常に表面的・一義的なものであるのに対し、演者と観客のあいだで起こるエネルギーの交換はもっと複雑で多義的なものだから、まるでつねに円環しつづけるエネルギーの電気回路のようなものだからです。私自身、舞台を観に行くたびに思うのは、たしかに私はそのとき舞台を眺めているわけですが、同時に舞台が私を眺めていることもまた事実だということです。つまり演劇に存在するのは俗にいうコミュニケーションではなく、たえず円環するエネルギーの潮流なのです。そしてだからこそ、一瞬にして消費されてしまうメディアの娯楽物とは異なり、演劇は、その作品がよければよいほど、時間をかけて観客の記憶のなかで反芻され発展していくのです。
——最後の質問です。あなたは演劇の将来に対してどのようなヴィジョンをお持ちですか。
RC:将来、演劇はますますなくてはならないものになるでしょう。それは明らかです。なぜなら演劇は現代社会のなかでじつに稀な体験となりつつある、出逢いの場、共同体の場、ある人間や事物のまえでともに時間を過ごすという貴重な体験を与えてくれる場だからです。ただつねに考慮に入れなければならないのは、演劇の作者は同時代の考え、同時代の背丈にあった作品を生み出していかねばならないということです。なぜなら演劇だけでなくすべての芸術作品は、芸術家ではなく観客によって所有されるものだからです。この一事さえ忘れなければ、演劇が消滅することはないでしょう。

INFERNO
Photo © LUCA DEL PIA
初出:シアターガイド 12月号 一部改訂