Paris Report / サルキス「Litany」ニュイ・ブランシュ(2)

November 29, 2009

Photo © Marc Verhille/Mairie de Paris

Photo © Marc Verhille/Mairie de Paris

高揚感はメトロを待つときから高められる。地下鉄的構内に響きわたる、どこか夢想的な倦怠感のたゆたう現代音楽。どうやらこれも作品の1つらしい。のちに調べたところによると、これは毎週日曜夜11時からラジオ曲フランス・クルチュール(France Culture)が放送している、かなり前衛的な音響番組ACR(L’Atelier de Creation Radiophonizue)で、13週にわたり放送された音楽をリミックスしたものだそう。世界的マルチメディア・アーティストのローリー・アンダーソンや、リトアニア人の実験映画監督ジョナス・メカスがたずさわった放送回の音楽も含まれているという。

 さて、そんなダウナーな酩酊状態に意識をひきずりこまれそうなリミックス・ミュージックに耳を澄ましながら、いざアール・エ・メティエ駅を出発。途中7番線に乗り換えて、5区にあるプラース・モンジュ駅で下車した。

 このあたりは、いつもなら夜中には閑散とした静けさに包まれる地域。だが今日は目に見えて人通りが多い。しかも彼らがみな同じ方角、トルコ人巨匠芸術家サルキスの作品『Litany』を展示するグラン・モスクに向かっている。この人たちみんな、モスクのなかに入るのかしら。小さな不安が脳裏をよぎる。そして予感は的中。満月を借景に美しいミナレット(尖塔)がそびえるモスクに到着すると、この歴史的建造物の周りをぐるりと、推定400メートルトラック1周半分の行列が取りかこんでいた。そして入口には「待ち時間、約45分」の立て札。帰ろうかな。一瞬、気持ちが折れる。

写真:イスタンブール出身の巨匠芸術家サルキスは、パリ市内最大のモスクで光と水と香りを用いたインスタレーション『Litany』を展示。モスク内部、パティオの泉亭から夜空にむかって光線が伸びる。あたり一帯にはバラの香が漂う。

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This entry was posted on November 29, 2009 at 11:58.

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