Travelogue イニシュマン島の静寂
極東から極西へ、アイルランドの西の果て、アラン諸島へ旅してきた。
芝生が生える音が聞こえるかと思えるほど静かであり、虚勢や見栄や尊称といった対外的な利益のためにおこる争いごとから無縁に穏やか。ただ人々が太陽が昇ってから沈むまでの時間を丁寧にすごしているだけの僻地の島。否応なく「Living」という単語の意味をあらためて考えさせられざるをえない、純精神的に充実した旅をすごすことができた。
さてこの清心な感覚がすっかり自分の身から抜け落ちてしまわぬうちに、文字に書きおこしておこうとおもう。
まずは島の概要から。アラン諸島とは、イニシュモア(モア=大きな島)、イニシュマン(マン=真ん中の島)、イニシュエア(エア=東の島)の三島からなる小島群。「ゲールタクト」という現在ではアイルランドでたった2%しか残存しないゲール語使用地域として有名で、喉の奥で微かにうめくような持続低音を響かせる「グラマハァグットゥ」という鈍色の挨拶があちこちで交わされている。旅の初日に降下したのは、三島のなかでも約160人ともっとも人口の少ないイニシュマン島。本土コネマラ空港からエアー・アランアイランズの小型プロペラ機でたった7分の飛行時間で、「飛ぶ」というよりノミのように「撥ねて落ちる」感覚で岩盤の大地に降りたった。
This entry was posted on October 10, 2009 at 02:24.