Interview ジュリエット・ビノシュ / 女優

April 6, 2009

Photo © Tristram Kenton

Photo © Tristram Kenton


——以前からダンスに挑戦してみたい想いはあったのですか?
いいえ。でも専属指圧師のスーマン・スュに「踊ってみない?」と言われたときには突発的に「イエス」と答えていたわ。まさかその一言が何か具体的なプロジェクトにつながるとは思ってもいなかったけれど。そこから振付家アクラム・カーンを紹介され、彼のパフォーマンス『Zero Degrees』を観に行くことになリ、気づいたらふたりで3日間、ロンドンのスタジオにこもっていた。もちろん私は一度も正統なダンスレッスンを受けたことはなかったけれど、それでもたった数日、アクラムと一緒にいろいろなムーヴメントを探りあっていくなかで、もっと自分の身体の可能性に賭けてみたくなった。それでどこに辿り着くことになるのかゴールはまったく見えなかったけれど、とにかく新しい何かを切り拓きたいという意志ひとつを信じて、初めてのダンス公演に挑戦してみることにしたの。

——ここでは様々な形の男女の愛が描かれますね。しかも全体的にかなり衝動的で危うい愛。
愛というテーマには、アクラムと長いあいだ話しあった結果たどり着きました。衝動的で危ういのは、ある部分で私の実体験を投影してるからかしら(笑)。私の恋愛哲学は、とにかく頭で考えるまえに好きだと思ったら飛びこむこと! だからこそ苦しむし悩むし、あらゆる嫉妬や所有欲や悲哀の暴風雨をくぐりぬけることになるわけだけど、その雨が去って気づいたときには、心が少しだけ穏やかになっている。まるで風化によって摩擦がなくなった丸石のように、心が滑らかになっている。そしてそのとき初めて人は、楽しくて嬉しくて何もかもが輝いて見えた1年目の盲目愛とは異なるかたちで、相手を深く愛せるようになる。

——あなたはレオス・カラックス、オリヴィエ・マルティネス、ブノワ・マジメルなどとの恋愛遍歴を重ねてきましたが、永続するパートナーシップを築くことに関しては現在ではどのように考えていますか。
おそらくそれは地球上で最も困難なミッションのひとつ。でも私はまだその実現可能性を信じているし、自分はそれを成し遂げたいと思う。もちろん私自身、ある一瞬なら、絶対的な絆を築けたと思ったことはあります。けれど長期的なことになると、話は別。1年が経ち、2年が経ち、当初は鏡像のように似たもの同士だと思っていた相手も、そこまで理想的じゃないことに気づく。そして、関係性が破綻することもある。けれど私たち人間はどんなに深く愛に傷ついても、また性懲りもなくそこに立ち向かう。だから男女は何か説明不可能な引力によって導かれ、生活をともに送る努力をしつづけるよう創られたものなのだと思う。それに私の主観では、パートナーと生きることは人生では不可欠。なぜなら人は誰かと一緒に生きることで初めて、自分の核心に触れることができるから。独りでいれば、人はいつまでも自分を防御して生きつづけられる。けれどその防御壁を取り払い、鎧を脱ぎ捨て、日々隠し通している傷をピンポイントでえぐってくるパートナーがいることは、とてつもない痛みをともなうけれど、とても大切なこと。そうしたパートナーがいて初めて、人は裸の自分を知ることができるの。

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This entry was posted on April 6, 2009 at 22:36.

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