Avignon Report フェデリコ・レオン / Yo en el Futuro

August 5, 2009

Photo ⓒ Wim Pannecoucke

Photo ⓒ Wim Pannecoucke

右、左、右。南仏地方では出会いがしらに互いの頬に3度キスをする。まるで甘酸っぱいスグリをついばむ小鳥のように、唇をすぼめてチュチュッと耳元で音を発する。私はこの行為がとても好き。ただの儀礼的な会釈や、熱の入らぬ握手では伝わらない、相手の温度を体で味わうことができるから。たとえば、挨拶以上の意図があるのではと訝んてしまうほど髭面をぎゅぎゅっと押しつけてくる中年男性の「ボンジュール」、以前とまったく同じ爽やかなマンダリンのロー・ド・パルファンが心を躍らせる陽気なマダムの「サヴァ(元気)?」、あるいは頬と頬をくっつけずに音だけでささっと済ませてしまう既に距離感のある「オールヴォワール(さよなら)」。人と人とが接触する、そのほんの刹那の瞬間に、視覚や聴覚だけでは伝わらない無限の情報が行き来する。

 気の長いアヴィニヨンの太陽がようやく本格的に復路をたどりはじめる午後5時。タンチュリー通り(直訳するとドライクリーニング通り)12番地にある劇場<サル・ブノワXII>でも、劇場前で、友人知人と待ち合わせをする観客たちがこのキスの挨拶を繰り返していた。昨日会った二人かもしれない、あるいは二年前に会った二人かもしれない。そのキスの温度から絆の行方を読みとろうとする。だが日本人の私の目から見ると、二重あごの太っちょなおばちゃんも、慣れない半ズボンから痩せた足を覗かせるインテリ紳士も、表面的には相手を同じように愛おしそうに抱いてキスをしている。やはり「見る」だけでは関係性の温度はわからないのだ。

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This entry was posted on August 5, 2009 at 02:41.

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