Avignon Report ナチェラ・ベラーザ / Le Cri

July 26, 2009

 右左、右左、右左、右左、右左。上半身を後方にひねりただこの単調なムーヴメントが繰り返されていく。いつしかふたりのユニゾンは、スティーブ・ライヒの楽曲のようにわずかなズレを生じ始める。だがそれは計算され尽くされたものではなく、彼女たち個々の体内で刻まれる自然のリズムが生んだ誤差。よって気づいたときには再びふたりは双子のユニゾンに回帰している。もちろん観客はいつかこの動作がダイナミックな変調を迎え、激しいダンス場面に変わるであろうと期待する。だが、大きく変化するのは背景に流れる歌声だけ。イスラム人シンガーのラルビ・べスタム、米国ポップシンガーのエイミー・ワインハウス、そして歌姫マリア・カラスの声が順を追って響いてくる。ベラーザ姉妹の身体は、フリーダムを謳歌するがごときこれら背景音に惑わされることなく、強制労働のように単調な動きをくりかえしていく。ときたまパッと線香花火の飛び火ように小さな乱調はきたすものの、(終幕間際にスクリーンに投影される二人のアバター映像が感情の反乱を起こすことは除き)生身の彼女たちの哀しみの導火線が着火され大爆発をおこすことはない。

 本作でナチェラ・ベラーザは昨年度の「Prix de la Révélation choréographique de l’anée( The prize for the choreographic revelation 2008)」を受賞。ムスリムの厳しい教則のなか、踊ることを禁止されていた自分の抑圧的なおいたちを、独自のダンス言語に具現化してみせたとして高い評価を得た。確かに近年、ダンスと称しながらも、身体と向きあうことをはなから棄権する作品が多いなか、自分の身体と衝動を、どうにかして結びつけようとする試みはそれだけで崇高な行為に思える。作品としての派手さや快楽性はなく、完成度もまだ荒削りなものの、その真摯な姿勢は好ましく思えた。

 さきほどまで炎天下で炙り焼きされていた観客は、冷気漂う教会のなかでの厳かな五十分ですっかり頭が冷やされたもよう。灼熱の太陽に負けぬようメガホンのように叫ばれていた声音は抑えられ、しっとりと思考的に落ちついた空気が終幕後の会場には漂っていた。


7/19 〜 21 Chapelle des Pénitents Blancs
CHOREOGRAPHY Nacera Belaza / LIGHTINGS Eric Soyer / CONCEPTION OF VIDEO AND SOUND Nacera Belaza / VIDEO IMAGES Corinne Dardé / VOICE Larbi Bestam / MUSIC EDITING Nicolas Perrin

Compagnie Nacera Belaza >> http://cie-nacerabelaza.com/

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This entry was posted on July 26, 2009 at 19:39.

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