Interview エドワード・ホール / 演出家

Photo © Nobuhiko Hikiji
——今日は忙しいなか取材に応じてくれてありがとうございます。電話が何度か留守電になって通じなかったようですけれど……。
ああ、じつは今日のシューティング(映画撮影)が予想以上に長引いてしまって。国際電話番号の着信に気づいてはいたんですけど、出ることができなかったんです。いまはもう自宅の居間で、のんびりしているところなんで大丈夫。いくらでも話せますよ。
——それでは、最初は定型どおりの質問から。どのような経緯でプロペラが始まったのか簡単に教えてください。
あれはたしかトニー・ブレアが国のトップに選ばれるとBBCのニュースが毎日のように騒ぎたてていたころ。僕はいまの劇団拠点であるウォーターミル・シアターのディレクター、故ジル・フレーザーと膝を交えて「なにか面白い芝居が作りたいね」という話をしていたんです。モダンな美しさ、ライブ演奏、生の音響効果……、それら要素を古典戯曲、特にシェイクスピアの戯曲にのせて芝居を作ったら楽しいんじゃないか。そんなコーヒーテーブル越しの会話が高じて、97年に『ヘンリー5世』を作りあげることになったんです。ここでは役者たちがみずから楽器を演奏し、小道具を自分たちで管理し、場面転換もすべて手動で行った。つまり舞台上のすべてが芝居の当事者である役者たちの手によってコントロールされていて、彼らは役者であると同時にストーリーメーカーをも担ったわけです。芝居の中身は、威勢のいいヘンリー5世の台頭にブレア人気をひっかけた非常に現代的なもの。嬉しいことにこの作品は大成功をおさめ、イギリスのナショナルシアターから、フィリピン、ドイツ、キプロス、インドネシアと様々な国を巡ることになりました。この成功をうけて僕らは、さらに芝居を作り続けることに。そして3作ほど立て続けにシェイクスピア作品を上演しました。そんなときメンバーの誰かがボソッとつぶやいたんです。「そろそろ俺たちには集団名が必要なんじゃないか」。それで話し合いのすえ<プロペラ>と名乗ることにしたんです。だからそれまでの僕らは、ただシェイクスピア芝居を作ることを愉しんでいる、名もなき物好き連中の集まりだったんです(笑)。