演劇と社会

【ARTICLE】群集を突き動かす声の力:ブリュッセル&ベルリン最前線より

人が集まれば力になる。その力は、暴力にも効力にもなりうる。果たしてこの群集の力は何を獲得すると「アラブの春」のような革命的ソーシャルモブを引き起こすパワーになり、また何が欠けると狂気的な集団ヒステリーに走ることになるのか。欧州圏演劇界でいま盛んに目にする“群集の力”をテーマに取る作品群を、日本の社会事象に引き合わせて紹介する。

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話し言葉の百科全書『組曲第一番ABC』Photo=Patrícia Almeida

群集心理の恐ろしさを舞台上から再三告発してきた劇作家といえば、この国では野田秀樹だろう。例えば『ザ・キャラクター』(10年)では、なんお変哲もない書道教室の教祖の言葉を「考える」よりも先に「信じる」ことを通して、集団が狂気的な暴力性を帯びていくさまが描かれた。この国では、群集は愚衆になぞらえられることが多い。

さて、ここ数年、欧州現代演劇界でも「マス」を題目として取りあげる芝居をよく見かける。だがそれら作品群での群集は“世を荒ませる暴力”を振るう存在であると同時に“世を新たにする動力”を促す人びとでもある。おそらくこうした描かれ方の背景には、個人の声がSNSなどを介して波及し、最終的に国家を動かすまでに至った、「アラブの春」の革命運動などが横たわっているのだろう。日本では人の群れは集団ヒステリーに直結すると思われがちだが、欧州では同じ群れが集合知に依拠するムーヴメントにも繋がっていくのだ。

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Posted on by K.Iwaki in ARTICLES / 記事

【BLOG】2014年に向けて

皆さま、明けましておめでとうございます。

年を重ねるにつけ、お正月という節目の尊さを実感しています。子どもの頃は、一年一年がまるで異質の重たさと豊かさをもって自分のなかにずっしりと蓄積していましたが、ミドルエイジのとば口に立つと、どうしてもダラダラのっぺり日常が続くような惰性的な時間感覚に陥ってしまう。そんなとき、まるでさっぱりとお風呂に入るように気分を一新してくれるのが、私にとってのお正月です。これから始まる一年を「充実した良いものにするぞ」という凛然とした志が芽生えてくる。とても清々しい季節です。

去年は、私にとって少しばかり停滞期でした。今年はロンドンの大学院での研究生活も3年目に突入することですし、また、いつまで研究者なんていう贅沢な身分でいられるかも分からないことですし、改めて気を引き締めて、まずは全力で「学者としての経験値を積む」ことに邁進したいと思います。具体的には春頃にロンドンでシンポジウムをみずから企画したり、夏頃に東欧の国際学会にいくつか参加したり、また博士論文完成とはべつに、日本演劇についての英語論文も発表のためシコシコ準備中です。あ、あと今学期からロンドンの演劇学生たちを教えはじめます。これまた、なかなかのチャレンジです。

とはいえ、これは年賀状にも書いたことですが、私の場合、大学の図書館に籠って過去の知識と格闘するという思索行為だけでは、どうしても幸福欲求度が半分しか充たされない。欲張りな話ですが、残りの半分を充たすためには、その獲得した知をいかに都市社会に連結させて武器として使うか、という実践に出たくなる。だからインプットと同じぐらい、アウトプットもしていきたい。それも日本と海外、双方に。そうして自分が芸術に対して近頃いっそう強く感じる「日常を拡張してくれる可能性」を、より多くの人々とシェアしていきたい。演劇研究者は研究者らしく、ジャーナリストはジャーナリストらしく、なんていう既存のフォーマットに当てはまることはさほど重要じゃないと思う。要は、未来を見据えて、過去の型に縛られず、自分がいちばん社会に貢献できる方法を探ればいいのではないでしょうか。

本年も何卒よろしくお願いします。日本滞在中は数えきれないほど多くの方々に自分が支えられていることが実感できて、本当に感謝の毎日でした。私は明々後日、ロンドンに発ちます。さあ、また独りの闘いのはじまりです。

 

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【BLOG】八日間のパレスチナ紛争と「トロイアの女たち」

今回のパレスチナ紛争は、やっぱり、今月初旬の米国大統領戦にことの発端の一部があるそうです。現イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、さる米国大統領選で共和党のミット・ロムニーを強く支持。いわゆる「ユダヤロビー」と言われるパワーを用いて米国による世界戦略を持続することを試みたと言います。しかしユダヤロビーは敗北し(本当に敗北してくれてよかった)、パレスチナ和平交渉に(とりあえず形だけでも)乗り気であるオバマ大統領が再選を果たしました。

その結果としてイスラエル国内では、いままで必死に和平を阻止しようと務めてきた右派の勢力が弱まり、オバマ同様和平を好む中道派(左派)が再台頭してきました。困ったのが、右派政権であるネタニヤフ首相です。彼は和平への機運がこれ以上進行するまえに、10月初旬に議会を解散。右派を再強化して政権奪取すべく、来年1月22日に行われる総選挙に備えることにしました。そして来年の選挙に向けて、国民の右派傾向を強めるためにネタニヤフ首相が取ったアクションが、今回の11月14日からのガザ侵攻なんだそうです。

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