ロンドン

【ARTICLE】敵も血もない、現代の「戦争物語」

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Grounded written by George Brant

 

古代ギリシャの時代から「戦争」はポピュラーな演劇の題材だった。トロイア戦争に出陣したアガメムノンも、ノルウェー軍と渡りあった武将マクベスも、共に故郷に戻り自宅で恐妻とやりあうまでは、戦地の敵と血まみれになり闘った。だが、2013年現在の戦争演劇はやや趣が異なる。まず敵が見あたらない。血や暴力が見えない。さらに言えば、登場人物が果たして「戦時下」を生きているのかさえ定かでない。今年のエジンバラ演劇祭で初演され話題を呼んだ一人芝居『 グラウンデッド』(2013年、ゲイト・シアターにて観劇)は、筆者の知る限り、いわゆる現代のドローン戦争を初めて真正面から扱う極めてアクチュアルな演劇作品であった。

登場人物は「パイロット」と名乗る女性空軍兵士(ルーシー・エリンソン)ひとり。昔から「めちゃくちゃやりすぎ」で男勝りな操縦士であった彼女は、出産を機に「青の世界」から「灰色の世界」に転属される。つまりラスベガスにある安全な軍用基地で灰色のスクリーンを12時間にらみ、アフガニスタン上空を飛ぶ無人兵器を遠隔操作して、ただのピクセル画像でしかない敵(のように思えるドット)を爆撃する任務に就くのだ。

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【ARTICLE】現代演劇が問う「効率性」の危機

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「効率性」という単語が流行っている。なにもそれはイタリアの国内総生産より多くのGDPを産出する巨大金融街ザ・シティで、アドレナリンを煽る文句として流行っているというだけではない。欧米圏の演劇界ではここ数年、効率性、より平たく言えば金稼ぎのための効率性を、芝居の議題として果敢に取りあげつづけているのだ。例えばソレは、日本でも翻訳上演された英国人劇作家ルーシー・プレブルの『エンロン』(2009年、ロイヤルコートシアター観劇)では、階層を無駄なく駆けあがってきた出世男の悲喜劇人生の起因として語られる。また独人劇作家ファルク・リヒターの『氷の下』(2013年1月、シャウビューネ観劇)では、一分一秒を無駄なく金換算ための暗黙の条件として示唆される。

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【BLOG】演劇は所有できない

ロンドンに住んでて「よかった」と心から思える数少ない要素のひとつに、劇場まわりで開催されるイベントの質と量があげられる。例えば過去の印象に残るイベントのひとつに、ロイヤル・コート劇場でPussy Riot(ロシアの女性アクティヴィスト芸術家集団)にまつわる芝居が上演されているさなかに、イーストロンドンの日本人経営のCafe OTOで、革命と社会運動にまつわる12時間討論イベントが開かれ、そこにゲストとしてスラヴォイ・ジジェクが登場したことなどがあげられる。Tシャツに短パンで現れた不潔で野蛮なのにどこかセクシーなジジェクは、汗だくになって数時間ノンストップで有象無象のできごとをしゃべりまくり、まわりから時に「おまえはただのポピュリストだ!」という反論を喰らい、反論の輪のさらに外から野次と声援の嵐が巻き起こり……という知的興奮のただなかに身を置くことができたのはとても貴重な体験であった。

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【BLOG】ロンドン最終夜

今日が、ロンドン最終夜です。
なにか自分のなかから感慨深いものがこみ上げてくるかと思いましたが、まったくそんなことはなく、少し肩すかしを食らっています。来るときもそうでしたが帰るときもかなり普通です。もちろん変化がないわけじゃない。ただ立派な変革というよりも、些細な変動が数えきれないほど内部で生起していて、しかもそれら地殻微動がすでに日常に統合されているため、自分でその変動を自覚化することができない。もしかすると東京に戻り、昔からの知人友人に接することで、自分の変化に気づかせてもらえるのかもしれません。なので1年前と比べてなにが違いますかと問われたら、いま出てくる答えとしては、「近所感覚で住める場所が増えた」ということぐらいです。世田谷とか東京とかと、あまり変わらない感覚でいまの場所に住んでいる。その緊張感のなさが果たして良いことなのか悪いことなのかは分かりません。でもそれがとても素直な感覚です。

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【BLOG】地獄の週、楽園の週

ロンドンに来て二週間が経過しようとしています。ようやく家が決まり、銀行口座も開き、携帯電話を手に入れ、学業がはじまり、なんとなく「生活」のようなものが築き上げられつつあります。もちろん成人して十年以上経ってから、これほどゼロ地点から生活のすべてを築きあげたのは初めて。一般的には人は歳をとるほど新たな環境にストレスを感じるようになると言われるため、来るまえはちょっと不安に思っていたのですが、いざやってみたらそうでもなかった。というより、適度に歳をとってからのチャレンジでむしろ良かった。

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