【BLOG】東京をニュートラルに旅立つ

さていよいよロンドンに向かいます。と、意気込んで「いよいよ」などと書き綴ってはみたものの、自分にはあまり「いよいよ感がない」というのが本音です。これは別にネガティブな意味でなく、非常にニュートラルにそうなのです。

自分のなかではすでに数年前から世界と日本の境界線みたいなものが、ぼんやりと消失していて、英国にほんの一年移り住んだところで、さほど世界が劇的に変わらないという予測が容易につくからです。私があと十歳若ければ「えらいこっちゃ」という期待感を持ったんでしょうが、いまとなっては海外に行くとはいえ、この遊学を足がかりに次なる何を見つけるか、現実的なステップを力強く歩いてるだけという着実感のほうが大きい。

とはいえ、ここ数ヶ月「なぜ留学するの」という質問を多く受けたので、その答をここに書き留めておこうと思います。答は二つです。一つは、ライフスタイルのポシビリティが増えるから。二つめは、今ある何かにしがみつきたくないから。

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【Interview】宮永愛子 / アーティスト

triennale100826_2—- あいちトリエンナーレで発表された新作『結―ゆい―』について伺います。まず本作ではなぜ、創作素材として、堀川の塩を使おうと思われたのでしょうか。場所にこめられた意味や思いを、具体的なエピソードどともにお聞かせいただけますか。

宮永 京都出身の私にとって、名古屋のイメージは通り過ぎる街。長く滞在することはありません。なので当初は町のシンボルである名古屋城の方角さえわかりませんでした。今回は、そんな自分自身の目線を大切にしつつも、名古屋の新しい発見に結びつくような展示をしたいと思いました。いつも私は、着想時に土地に流れている「過去の時間」を見つめます。現在は昔の続きにあるからです。はじめに名古屋の下見に訪れた時、お城につながる川を見つけ、その存在にとても惹かれました。こういう出会いとインスピレーションを、私は作品のはじまりとしてすごく大切にしています。その川について調べると、400年前の築城の際、木材を運ぶ運河であったことがわかりました。つまり「木の道」です。またこの川は、ものの売り買いのはじまる場所、名古屋の城下町の始まりであったことも知り、ますます魅力を感じてゆきました。

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【Interview】ジゼル・ヴィエンヌ / 演出家・振付家

M2538-300x176—— この秋、初めて東京で作品を上演されます。あなたのことを知らない観客も日本にはまだいますので、まずは基本的な経歴から伺わせてください。あなたは演出家として非常にユニークな経歴をお持ちですね。大学では演劇ではなく哲学を専攻され、その後、フランス国立高等人形劇芸術学院で学ばれます。なぜこのような進路を選ばれたのでしょう。

GV 私は若いころから非常に多くのことに情熱をそそいできました。文学、哲学、音楽、ヴィジュアルアート……ほかにもありますが、主だったものはこれらです。そしていつも私は、文学と音楽とヴィジュアルアートを融合する最適な手段は人形劇だと思いつづけてきました。別に子供のころから人形劇をたくさん見ていたわけではありません。ただ私自身が、そのような人形劇を作れると漠然と信じてきたのです。それで国立高等人形劇芸術学院への進学を志したわけですが、まさか合格するとは思いませんでした。それまでの私は、ヴィジュアルアーティストである母の影響でハンス・ベルメールやアネット・メサジェなどの創作人形に触れていたとはいえ、大学ではまったく関係のない哲学や音楽を勉強していたわけですからね。でも運良くこの教育機関に受け入れられ、私は初めて本格的に演劇や人形劇を学ぶことになりました。なかでも当時見た淡路人形座の文楽にはとても感銘を受けました。私がその頃から試みようとしていた、テキストと音楽とムーヴメントの相互性が、そこではすでに洗練されたかたちで完成されていたからです。

—— 卒業後あなたは、生身のからだと人工物である人形、その双方を素材として振付家・演出家・ヴィジュアルアーティストとして創作を始められます。そして6年後の05年に『I Apologize』『Une belle enfant blonde』をたずさえアヴィニヨン演劇祭に登場されます。

GV 今年でアヴィニヨンは三度目になりますが、初めて招聘されたとき私はまだ29歳で、いまと同様かなり過激な作品をつくりつづけていたため、このような歴史あるフェスティバルに参加するのは無理だろうと思いこんでいました。けれど当時アソシエート・アーティストを務めていたヤン・ファーブルが私のことを強く押してくださり、芸術監督のヴァンサン・ボードリエールにも気に入ってもらい、私はアヴィニヨン・デビューを飾ることができたのです。この幸運にはとても感謝しています。

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【Interview】ホッフェシュ・シェクター / 振付家

15374————今回が初の日本公演になります。あなたがどのようにしてダンスをはじめられのか、少し自己紹介をしていただけますか。
僕はまず子どものころに民族舞踊を習いはじめました。イスラエルでは民族舞踊がとても盛んなのです。老若男女、なにか祭儀があるたびに踊ります。と同時に、僕は音楽も好きだったのでピアノも習いました。絵画も少しやったかな。でも最終的にはダンスを選んだ。ダンスがいちばん人と社交できて楽しかったんです。僕はとても内向的だったので、ダンスによって自分を表現する手立てが得られたのが嬉しかったんです。それでその後、エルサレム・アカデミー・オブ・ダンス・アンド・ミュージックで学び、また十代後半からはプロのダンサーとしてバトシェバ舞踊団で踊るようになりました。

————その後、いちどダンスをやめて打楽器奏者を目指されますね。
そうなんです。なぜかダンスだけでは僕のなかにある「創造欲」を満たすことができなかったんです。それで打楽器の先生をテルアビブで探しだし、その後二年、毎日五時間ドラムを叩きつづけました(笑)。でも今から考えると打楽器を習得したことは、現在の振付活動にとても役立っているように思います。というのも僕は基本的に、振付を考えるときにリズムから考えるんです。舞台役者が緩急や強弱などの言葉のリズムを決めてからセリフを言うのと同じように、僕もムーヴメントのリズムをまず考える。で、そこで打楽器を習っていた経験が役立つ。また振付と音楽の双方をクリエイトできるようになったことで、かなり純度の高い自分だけの世界観が作れるようになりました。だからようやく今、自分の創作欲が満たされているように思います。
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【Interview】ロメオ・カステルッチ / 演出家

due-300x225——今回、日本で上演されるダンテの『神曲』三部作(地獄篇・煉獄篇・天国篇)は08年度のアヴィニヨン演劇祭で世界初演され絶賛された作品です。地獄篇がヴィジュアルシアター、煉獄篇が物語演劇、天国篇がインスタレーションと異なるかたちで発表されました。なぜこのような創作手法をとられたのでしょうか。

ロメオ・カステルッチ(以下RC):ひとつ言えることは、私はここで『神曲』の解説を試みようとしたわけではないということです。ダンテはあまりにも偉大であり、あまりにもその作品が壮大なため、それそのものを形にしようとすることがまず不可能。そこで私はダンテに挑むにあたり、ダンテの本を閉じることから始めました。そしてこのイタリア語の父とされる国民的詩人が、その想像力によりこの世に存在しない世界をつむぎあげたのと同様に、私も自分の想像力を頼りに創作の旅路に挑むことにしたのです。そして最終的には、インフェルノ(地獄)、プルガトリオ(煉獄)、パラディソ(天国)という三つの言葉が象徴する「人間の状態」を描くことに決めました。とはいえ地獄、煉獄、天国は、個々人のなかに異なるかたちで存在します。また個々の生活のなかでも異なる時間に存在します。こうした理由からおのずと、三つの作品は別々の手法でかたちづくられていくことになりました。

——『地獄篇』では名もなき無数の人々が登場すると共に、アンディ・ウォーホールが現れます。なぜウォーホールなのでしょう?

RC:ダンテは地獄の案内人に古代ローマの詩人ウェルギリウスを選びましたが、私はウォーホールを選んだのです。なぜなら彼は、今日の芸術の「匿名性・無名性」という素晴らしい概念を発明した人だから。たとえば彼は自作において、毛沢東の肖像画とバナナの静物画を等価なものとみなしました。つまり彼は描く対象をアイコン化することにより、歴史的背景や文化的な重みというものを無化してしまったのです。そして、すべてを表層的なイメージで捉え「未来には誰もが15分は世界的な有名人になれる」という言葉を放った。私の考えではこの一文は、現代の地獄の門に刻まれる文言にもなりえます。だからこそ私も『地獄篇』において、ウォーホールのように表層的なイメージを収集するかたちで作劇を進めていったのです。
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