【BLOG】 美女と酒と芸術のクルージュ

先週、ルーマニアのクジュールという町を訪問して「Temps d’Image」というフェスティバルを視察してきました。このフェスはドイツ、カナダ、ポルトガル、ハンガリーなどでも同名のフェスが開催されていて、母体はフランス。で、そのルーマニア支部を訪れてきたという感じです。フェスティバルのディレクターはほぼ私と同年齢の女性で、若くてイキの良いルーマニアの若手作家を世界に向けて紹介したい!という、パイオニア精神に非常に共感しました。特徴として面白かったのは、日本でいうならテン年代と言われる、80年代生まれの若手作家たちが今になって1989年のチャウシェスク政権崩壊の事実を語りはじめているということ。自分が生まればかりの頃の革命史なんて日本人だったらおそらく気にしないで生きていきそうですが、彼らにとってはそれは「過去」の過ぎ去った問題ではなく「現実」として取り組むべき問題。今のぼくらが語らなければ未来は元の木阿弥になってしまう、という危機感とパワーを感じてその真摯さに心を打たれました。

なかでもデヴィッド・シュワルツという演出家の『Heated Heads』という一人芝居がすばらしかった。これは革命直後の1990年 6月13日から15日に行われた30人の民間人・公人へのインタビューをもとに作られたドキュメンタリー演劇で、銀行員から、パンクロッカーから、詩人から、大学教授から、革命後権力の座についたイオン・イリエスク大統領まで、全員を20代半ばの役者ひとりが演じきります。その素晴らしい演技の精度とともに真実の「声」が蘇ってきて、私はルーマニアの歴史のことに詳しくは知らないですが、隠されていたからこそ民衆の心に深く傷跡を残している政治の暴力のデカさに怖気を覚えました。と同時に、政府が隠した真実がいつ明かされるのか、、、という点で日本のいまと同調してしまい、我が国の未来を予見するようで末恐ろしくもなりました。

さてさて、演劇のことはさておいて、さらに面白かったのがルーマニア・クルージュの町です。とにかくこの町は「カオス」に満ちています。まずクルージュ空港への着陸時の飛行機内からカオスで、誰も彼もが飛行機が止まるか止まらないかってことも待たずに、席を立って我先にと出口に向かう。私は飛行機にはわりといっぱい乗るほうですが、こんな事態に初めて出くわしました。私の勝手な考えでは、これは貧しかった共産主義時代の名残じゃないかと思う。人のことを気にして優雅に譲ったりしてたら、ここじゃサバイブしていけないんじゃないか、と。ただその人たちが自己チューで嫌な奴らかというと全然そんなことはなくて、むしろあけすけに好き嫌いを言い、ウマが合うとなったらとことんオープンに語ってくれるので、非常に気持ちがいい。

特に酒を飲むとそのあけすけさに拍車がかかって、自虐ネタをいっぱい言い始める。それはもうほとんどが自分たちを貶めるようなブラックジョークで、とっても根暗なんだけど、その根暗さが半端じゃないぶん、逆に笑えてきてしまう。だって「俺の父ちゃんは政府の秘密警察として雇われていたらしくてさぁー、最近その秘密資料がみつかっちゃってさー、もー、どーしよーって感じなんだよ。ヤバイだろーこれ。抹殺したいよ。父ちゃん頼むよって感じだよ」とか悩み相談されてもさ、暗くなるっていうよりも、むしろその悩みのスケールのでかさに笑いたくなってきちゃうのです。ただアルコール度数80%の酒をかっくらったりしてる人たちですから(一口なめたけど、舌が焼けるかと思ったぜ……)、どこまで話がホントなのかも怪しかったりする。

大酒飲みの理由としてルーマニア人が利用するエクスキューズは、外気温はマイナス10度とかで極寒だから寒いし「体温めなきゃー」ってことらしいです。でも、私からすると単純にみんな大酒飲みなだけです。ちなみに、仲間と酒を飲むのが好きで好きでしょうがなくて、芝居を見るのも好きで好きでしょうがなくて、それで自分んちのリビングルームを劇場にしちゃったというお茶目でチャーミングな男性にも出会いました。自分の家で酒が飲めて、しかも自分の好きな芝居まで見れる、しかも自分で作れちゃう! 出かけるより手間暇かからなくっていいじゃんということらしいですが、、、変にこの男性に芝居創作の才能があったらしく、いまではフェスティバルのフリンジ企画の一部にも組み込まれているほど。「場内30席とかだからさ、いつも満員御礼だよ! いつでも来てね!」と誘われちゃいました。今度、ルーマニアに行ったおりにはぜひ遊びに行こうと思います。

週末だけでなく、月火水木金土日と毎晩朝4時半とかまで遊び呆ける若者たちがいる学生街のクルージュ。ナイスバディなセクシー美女がそこらじゅうをほっつきあるいていて、女の私でも目を奪われてしまう美女の町クルージュ。是非今度は寒くない夏場に仕事とは別に訪れて、全力で遊んで来ようと思います。美しく整備された観光地でなく、カオスな場所を訪れたい物好きなツーリストにもかなりお薦めです。

Posted on by K.Iwaki in BLOG / ブログ